私は相槌を打ちながら店長の話を聞いていた。


そこで、名案が浮かんだ。


それで、次のようなことを店長にお願いした。


「昔のことは、ともかくとして今の遠藤さんがどんな人か知りたいです。いろいろ遠藤さんと話してみたい。店長、なんとかなりませんか?」


藁にもすがる気持ちで店長の目をじっと見る。


店長は人懐っこい笑みを浮かべると、こう答えた。


「俺でよかったら協力するよ。あいつは俺の友達だし、薫ちゃんは俺の大事なお客様だし。二人がくっついてくれたら嬉しいんだけど……薫ちゃんには……」


そこまで言うと、困った顔をして店長は口ごもった。


「優がいる」


花音が店長の言い渋っていたことを、ハッキリ口にした。


たしかに、私には優がいる。


でも、恋は誰にも止められない。


自分でも遠藤さんへの気持ちにブレーキをかけられない。


まぶたを閉じれば、あの人の顔が浮かぶ。


あの人の顔が、目に焼きついて離れない。


あの人の声が今にも聞こえてきそう。


恋の始まりは、いつだってこうだ。


最近、眠れない日が多い。


夜になると、何度もあの人のことを考えながらベッド上で寝返りを打つ。


ドクン、ドクンと心臓が波打ち身体の芯が抜けたような不思議な感覚に陥って、しびれて起き上がれないんだけれど、なんとか左右に動いて胸の高鳴りを抑えようとする。


明け方には、身体が火照っていて冷たいシャワーを浴びることになる。