花音は言葉を続ける。


「良い人そうに見えるけど、どうかなあ? 偽りの良い人って臭いが、ぷんぷんする。私はああいうタイプ、懲り懲り。白いTシャツとジーンズが似合う超スタイルの良い二枚目は甘やかされたダメ男が多いんじゃない?」



花音は過去に何があったんだろう?


決して白いTシャツとジーンズが似合わない店長を好きになるし、遠藤さんのような美形に敵意むき出しになるし、さっぱりわからない。


「うーん。あいつは、勉強も運動も何でもできて学校のスターだったけどな……でも……」


目を伏せた店長は、その先を言いたがらない。


花音は、いかにも興味津々といった感じで店長の方に顔を向けた。


私もその先が気になる。


「悪い噂が流れたんだよ」


その一言に私の心臓がドクンと跳ねた。


「悪い噂って?」


花音が身を乗り出して聞く。


「うーん。おおかた、ふられた女の一人が腹いせに悪い噂を流したんだろう。『遊び人で嘘つきで腹黒い』って……」


困惑気味に店長が口にする。


「ふーん。それって案外、当たってたりして」


「もう、花音。やめてよ」


憎まれ口を利いた花音を私が諫める。


「はい、はい。私が悪うございました」


花音は素直に謝った。


「俺は、いい奴だと思うよ。卒業後、あいつは大学に俺は調理師になるため専門学校に進んだから長い間、会ってなかったんだけど、偶然、二年前に街でバッタリ会って店の話をしたら会社の同僚と通ってくれるようになったんだ」