「でも、赤の方が似合っている」


じっと私の唇を見て言った。


「もちろん、ピンク色も似合わないことはないよ」


そう言いながら私の頬に指で軽く触れる。


懐かしい感触だ。


「薫は何色でも似合うだろうね。でも、赤は薫を大人っぽく見せていた」


葵が頬を撫で始めた。


撫でられると心地いい。


「赤の方がいい」


そう言って優しく顎を掴んだ。


私の顔を自分の方に向けさせようとする。


「前のあの口紅はこれよりもっとエレガントだった。だから、僕は好きだな」


葵が柔らかい口調で言った。


「あれ?」


私はそう聞くと自らの意思で顔を葵の方へ向けた。


葵の優しくて澄んだ瞳が私の瞳に映る。


私は微笑んだ。


そして、葵に対してこう言った。