今、この瞬間、ようやく心のわだかまりが解けた。


スッキリした心持ちで、これから学校に通えそうだ。


私の悩みという悩みがすべて解消されていくような気がした。


とても心が満たされて安穏に時を過ごしていると人の気配を感じた。


すぐ横で葵が冷たい目をして立っている。


ドキッとしながら見上げた。


「何か?」


私が尋ねると葵がイヤミたっぷりでこう答えた。


「今の背の低い男の子は中学生に見える。ずっと前に店で泣いてた子じゃないのかな?  ひょっとして薫が嫌っていた元彼さん?」


私は何も言わなかった。


葵の相手をするのもバカらしい。


ひたすら黙っていようと顔を背けた。


窓の外の芝生を見つめる。


ゴルフ場のグリーンのような眺めだ。


葵の大きなため息が聞こえたかと思うと、さっき優が座っていた椅子を葵が勝手に引いていた。


そして、腰を掛けた。


「実は、うまくいってないんだ」


悲しい声で葵が話し始める。


「離婚するかもしれない」


そう言うと、私の手の甲に葵は手の平を乗せた。