そう言って花音は笑った。


花音は二ヶ月前に学校を辞めてしまった。


だから、クラスから消えた。


来月はクラス替えがある。


私が理系クラスにしたのは敵対するグループの女子が文系クラスを選択するというのを耳にしたからだ。


これで、離れられる。


学校に通いやすくなるだろう。


「薫、元気だった?」


花音の陰に隠れてわからなかったけれど、不意に葵が顔を見せた。


とても爽やかな笑顔で近寄ってくる。


葵の声がしたので、笑顔だった花音の目つきが変わった。


「イケメンだ……」


私の隣にいた女友達が葵を見て呟く。


「久しぶりだね。会いたかったよ」


私はその言葉に愛想笑いした。


どうして会いたかったのか疑問を感じる。


もう、会う必要はないはずだ。


「また、後で話そう」


耳元で囁かれる。


私を誘っているかのような口ぶりだった。