「病院へは行った?」


「行ってない」


矢継ぎ早に質問をぶつけてくる花音は必死で焦っていた。


まるで自分のことのように戸惑っていた。


二人とも、しきりに瞬きをする。


「優! あんた、父親になりなさい!」


突然、優に向かって強い口調で花音が言う。


「薫が好きなんでしょ? 今でも好きなら父親になってあげて!」


そう花音はキッパリ言い切った。


何をバカなことを言い出すんだろう。


優が父親になるわけない。


自分の子供ならまだしも相手は知らない人の子供だ。


それに元カノの私に未練など、もうないに違いない。


でも、予想に反して優は意外なことを口にした。


「なるよ」


「え?」


「父親になる」


「何、言ってるの? 自分で言ってることがわかってるの?」


「わかってるよ。子供の父親になりたいんだ。自分の子として育てたい」


優は冷静に答えた。