花音には嫉妬してしまう。


「国内で数ヵ月後に結婚式をするんだ」


花音のその声は暗かった。


下を向いて私と目を合わせようとしない。


これから結婚する幸せな人に見えなかった。


「こんな状況でこんな報告したくなかった。薫がこんな時に自分だけ幸せになるのは嫌だよ。なんか苦しいし、切ないよ」


花音が絞り出すように言った。


「あの人、来ないよね?」


優がためらいがちに花音に聞く。


「あの人?」


花音が優に聞き返す。


「遠藤さんだよ。結婚式の招待客リストから、はずせよ。ちゃんと店長に言っとけ」


ぶっきらぼうな言い方だった。


優は私を傷つけた葵のことを怒っているんだ。


「言われなくても遠藤さんは呼ばないよ!」


花音が声を荒立てる。


花音も相当、葵を嫌っているようだ。


「遠藤さんは来ないから結婚式に来てくれるかなあ?」


そう誘った花音は私の顔色を窺っていた。


私はもう葵が式に来ても来なくても、どっちでもよかった。