『愛してる』と言ったのに愛してなかったんだ。


嘘だったんだ。


つまり、葵は大嘘つきだったということか。


「あはは……あははははは……『愛してる』だって……。あはは……笑っちゃう……。笑っちゃうよ。あははははは」


いつのまにか頬を伝う涙が口に入る。


流れた涙を飲みながら私は笑った。


壊れたんだ。


「この二人……別れるよ……」


誰も聞いていないのに一人で毒を吐いた。


映画の中の二人は遠距離恋愛の末、ラストにそれぞれ新しい恋人ができて別れた。


本当に別れた。


「ほらね……」


笑いが止まらなかった。


狂ったように笑った。


でも、お腹には片手をしっかりあてていた。


▼ ▼ ▼ ▼ ▼


憮然とした面持ちの二人が肩を並べて座っている。


最初は、部屋が荒れているのを見て驚いていた二人だけれど今は慣れた様子だ。


小さなテーブルの上には母親が用意したホットミルクのマグカップ三つとビスケットの皿が置かれていた。


それらを挟んで向き合っていた。