「どうしたらいいんだろうね」


私も優も無言のまま時が過ぎた。


私にはどうすることもできない。


彼は既婚者で奥さんと離婚できないんだから諦めるしかない。


諦めるしかないんだ。


優はベッドから立ち上がると、私の肩にそっと手を置いた。


「今日は帰るよ」


その声は沈んでいた。


「怒ってる?」


「怒ってないよ。これから、どうするかは薫自身が決めろよ。俺には何もできないから。当人同士の問題だし。お前が裏切られて本当、気の毒だと思ってるよ」


私の問いかけに優は力なく答えた。


「ありがとう」


優の瞳をじっと見つめてお礼を言う。


「いや。別に俺は何もしてないから。それより、薫。あんまり思いつめるなよ」


「うん。わかってる。大丈夫」


「俺は今でもお前のこと……」


「何?」


「いや、何でもない」


くるりと背中を向けると、優は部屋を出ていった。


優を玄関まで見送る。