「なんで? お前が誘ったんだろ? なんで嫌がるんだよ」


優は怒りを通り越して呆れていた。


優の重いため息が私の耳に入る。


私は下を向くことしかできなかった。


拳を握り締める。


その拳の上に涙が零れ落ちる。


「お前、おかしいよ。何があったのか話せよ」


優の幽かな声が部屋に響いた。


立ち上がって床に転がっていたティッシュの箱を手に取る。


私はティッシュペーパーを自分の目頭に押しあてた。


すぐティッシュは私の涙で湿った。


「遠藤さんに何されたんだ?」


『遠藤さん』という言葉に胸がぎゅっと絞めつけられる。


葵に会いたい。


会いたくて会いたくて思いに耐えられない。


「裏切られたのか?」


優は感づいている。


もう嘘はつけない。


「そうだよ。裏切られて捨てられたの。笑っちゃうでしょ? でも、好き。今でも愛してる」


「そっか。そうだったのか。こんな時、どうしたらいいんだろうなあ?」