こんな家、言われなくても出ていってやる!


私は寝室に入って大きな鞄に私物を詰め込んだ。


詰め込んでいる間、ずっと葵に冷ややかな目で見られた。


その葵の冷たい視線が胸に突き刺さって痛い。


早く、この家を出ていこう。


もっと早くに出るべきだったんだ。


やがて、詰め終わって大きな鞄を片手にリビングへと戻った。


ソファの上に置きっぱなしにしていたコートを手に取る。


その下から加瑠羅が返しに来た十二万の封筒が出てきた。


黙って封筒を葵に渡す。


「これは何?」


中を確認しながら葵が尋ねる。


「加瑠羅さんが今まで借りてたお金を全額払いに来たの」


「いつ?」


「クリスマス・イヴ」


そう答えると、私はコートを着た。


コートのポケットから合い鍵を取り出すと、葵の手にそれをしっかり握らせる。


「もう二度と来ないから」


捨て台詞を吐いて私はリビングから廊下へと向かった。


玄関で靴をはいていると、葵が私のコートのポケットに何か入れた。