「嘘つき! 嘘つき! 嘘つき! 嘘つき!」


声が嗄れるほど、喉が渇いて痛くなるほど責め続けた。


葵の表情は憂いを帯びる。


「許してくれ。あいつとは離婚できないんだ。純粋なあいつを愛してる。一番大切なのは家族なんだ」


じゃあ、私に『愛してる』って言ったのは嘘だったの?


あれも嘘だったの?


ベッドで愛を囁き合ったじゃない。


あれは全部嘘だったの?


私より奥さんの夏子さんの方が好きだったの?


愛していたの?


「わかってくれ。頼む」


葵が正座して手をついて頭を下げる。


「わからない。わからないよ……うげっ……」


気分が悪くなって口を手で押さえる。


吐き気がした。


「このままずっと僕の愛人でいてくれないか?」


その言葉にクラッと心が揺れる。


でも、ダメだ。


愛人なんか嫌だ。


不倫は嫌い。


「家族が一番大切ならなんでこんな不倫なんかするの!? 最初にふってくれた方がずっと良かったよ!」