気持ちのいい返事と共に花音はそれを遠藤さんのテーブルへと持って行った。


後ろのテーブルでは遠藤さんを含む全員が帰り支度をしながら立ち上がっていた。


「ごめん。もう、帰るよ。お愛想お願い」


遠藤さんは、申し訳なさそうに言った。


「え～！　そりゃ、ないよ～！　遠藤さんがこれ頼んだんでしょ？　どうすんの？」


「困ったな……」


花音に責められ悩ましげな表情をする遠藤さんもゾクッとするほど魅力的だった。


その上、驚いたことに遠藤さんは長身だ。


のっぽの花音よりも頭が上にある。


１８０はあるんじゃないだろうか？


体の線も細い。


スーツがよく似合っている。


淡いブルーのシャツにシルバーのサテンネクタイを締めていて黒い上着の胸ポケットからは白いハンカチが覗いている。


なんてセンスが良いんだろう。


ちょっと、オシャレ過ぎるような気がするけれど遠藤さんを引き立たせていて、見ていて惚れ惚れする。


不意に、遠藤さんが私に視線を向ける。


ドギマギして私は目を逸らした。


遠藤さんは私を熟視している。


あまり見られると面映い。


「ちょっと、君。いいかな？」