私が『クマのぬいぐるみ』のことを言ったので知っているはずだ。


何をしているんだろうと、私は横からその顔を覗き込んだ。


「見えた!」


突然、顔を上げて大声を出す。


その目はしっかり開かれていた。


私は肝を潰した。


彼女の言動は予測不可能なので困る。


「クマのぬいぐるみだね?」


「まあ! なんてこと! 先生、すごいわ!」


夏子さんは大層驚いて感嘆の声を上げる。


「当たりだね」


「ええ。前から占い師のような不思議な方だと思っていましたけど、やっぱり不思議な力があったんですね」


夏子さんはすっかり加瑠羅にだまされている。


なんて夏子さんは、だまされやすい人なんだろう。


少し呆れて二人の会話を聞いていた。


「ついでに、もう一つ」


加瑠羅が人差し指を立てて中腰になって夏子さんに近づく。


気味が悪くなったのか夏子さんは辟易していた。


「なくしものをしたね」


その言葉に夏子さんは小首を傾げる。