「ほんの短い間ですよ。そういう仕事もしてました。でも、すぐ結婚してやめたんです」


「夏子さんが男に言い寄られてるのを何度も目撃して、そのうち誰かに盗られるんじゃないかって心配になった遠藤君が卒業と同時にプロポーズしたって聞いたけど、それも本当かい?」


加瑠羅に聞かれて夏子さんは耳を真っ赤にして首をぶるぶる横に振った。


加瑠羅はその様子を見てニヤニヤ笑っている。


「夏子さんは可愛いね。色も香もある。その上、ダイナマイトボディときたら天下無敵だ。同じ女として憎いよ」


そこまで言うと、夏子さんは顔に紅葉を散らす。


加瑠羅はますます面白がってからかう。


「胸は何センチなんだい? 私はバスト77。ペッタンコなんだよ」


「内緒です。教えませんよ」


「いいじゃないか。減るもんじゃないし。教えてくれよ」


「大きければいいってもんじゃありません。もう、こんな話やめましょう」


夏子さんは困り果てていた。


葵を夏子さんから奪えない。


夏子さんのような女性から奪えるわけがない。


夏子さんは私のような中途半端な美人と違って本物の美人だ。


心だってキレイだ。


尊敬すべき最高の女性かもしれない。


こんな人にどうやったら勝てるというんだろう?


闘いを挑むことさえ間違っているような気がする。


私は不倫をしていたんだ。