「そりゃ、もう。店長とはおおちが……い……いいいい……いたい……」


私と花音の会話を聞いていた店長がカウンターから手を伸ばしてきて花音の耳を引っ張った。


「わ・る・か・った・な~」


拗ねた口ぶりの店長は、花音の耳を持ったまま離さない。


「痛い。痛い。離せ~」


花音が必死に抵抗する。


「離すもんか。こいつ~」


そう言って店長はまだ離さない。


こうして、じゃれあっているところを見ると二人はすでにできているんじゃないかと思えてくる。


「お二人さん、アツアツですね」


冷めた口調で言葉を発すると、店長は手を止めた。


「あっ。ごめん、ごめん。薫ちゃん。はい、これ。遅くなったね。それからこれも」


店長は、つくねの皿と湯飲みを私に差し出した。


湯飲みには熱いお茶が入っている。


受け取る時に、湯気が私の鼻にかかった。


「熱いから気をつけてね~」


店長は優しい笑みを浮かべながら、私に猫なで声を出す。


「それと、花音。これ、あいつんとこ持って行ってあげて」


唐揚げの皿を店長が花音に渡す。


「合点承知」