私の耳元に加瑠羅が囁く。


正面のアール扉の向こうにリビングがあった。


スリッパを用意されて、それをはいてリビングへ進む。


リビングはゴージャスだった。


壁面に暖炉が設けられていて、リビングテーブルの下には絨毯が敷かれていた。


ソファはヨーロッパの伝統的なクラシカルデザインで上品な色合いの淡いゴールドだった。


コートを脱いで座るとそれは弾力性があった。


クッションもいくつか置いてあって触るとふわふわで柔らかかった。


「少々お待ちください。お茶の用意をしてきます」


黒髪のソバージュがよく似合う雪肌の美しい女性がそう告げると別室へ姿を消した。


服の上からでも豊満なバストだとわかる、あのセクシーな大人の女性は誰なんだろう?


もしかして葵の妻だろうか?


妻がいたんだろうか?


ずっと私はだまされていたんだろうか?


ほどなくして、彼女がティーセットを運んできた。


高価そうなティーポットからティーカップに紅茶が注がれる。


「ダージリンですよ」


そう口を動かす彼女を紅茶の湯気越しに見つめた。


赤いルージュが映える色白美人だ。


この赤いルージュが何を物語っているか。