「どこで見つけたんだい?」


その口ぶりは落ち着いていた。


「車内です。助手席の足元に転がってたのを偶然にも拾ってしまったんです」


「ふーん。なるほどね」


口紅を手に取って加瑠羅は弄ぶ。


「これは、私の持ち物じゃないね」


加瑠羅の言葉に耳を疑った。


加瑠羅の持ち物でなかったら一体誰の持ち物なんだろう?


加瑠羅は口紅の蓋を取って真っ赤なルージュを出した。


それは、私が使ったせいで減っていた。


「おそらく、今晩、葵と会ってる女の落とし物だ」


「そんな! それ拾ったのゴールデンウィークですよ!? 二人はそんな前から付き合いがあったってことになる。もしかして以前から付き合ってた? だとしたら、浮気相手は私?」


「ははは。そうだよ、お嬢ちゃん。浮気相手はあんただったんだ。あんたが葵を取ったんだよ。あの人からね」


加瑠羅は知っている。


私の恋敵が誰か知っているんだ。


彼女が誰なのか知りたい。


一体、いつから葵と付き合っていて、どんな女の人なのか知りたくて知りたくてたまらない。


「教えてください! 葵の本命彼女のこと!」


真剣に加瑠羅に乞う。


強い視線を送る。