だから、クリスマスのないどこか遠い世界へ逃亡したくなった。


やはりあの世に逃げるしか逃げ道はないのか?


死のう。


意を決してソファから立ち上がった時だった。


微かだけれど音がした。


玄関の方からだ。


誰かが鍵を開けたのかもしれない。


誰かが玄関にいる。


葵だ。


葵以外、考えられない。


帰ってきたんだ。


ひょっとすると、あのプレゼントは私へのクリスマスプレゼントだったんじゃないだろうか?


夏女のためではなく私のためのプレゼントで私を驚かせようと前から計画していたんじゃないだろうか?


あの大きなクマのぬいぐるみは、よく考えたら女子高生の私にお誂え向きのプレゼントだ。


そうだとすれば、サプライズだ。


ここで葵を待っていてよかった。


夏女とクリスマスを過ごすと思い込んでいたけれど被害妄想だったのかもしれない。


葵がリビングに入ってくるのを心待ちした。


痛みというあらゆる痛みが消えてなくなり、歓喜に満たされた私の口元が緩む。


おもむろに廊下とリビングの間のドアが開く。