ガラス一枚隔てた向こうに葵がいた。


こんな近くにいるのに葵は私の存在に気付きもしない。


葵は大きなクマのぬいぐるみを抱えていた。


レジカウンターに立つ男性の店員さんと話をしている。


何を話しているのか二人とも笑顔を絶やさない。


葵がクマのぬいぐるみを店員に渡すと店員はプレゼント用にラッピングし始めた。


葵は、その間に財布を取り出し札を用意する。


会計を済ませてから葵はラッピングされたクマのぬいぐるみを受け取った。


受け取った時、葵は心の底から嬉しそうに笑った。


頭の中がクリスマスで浮かれているような感じがした。


葵がもうじき店から出てくる。


慌てて隣の店の中に入って隠れた。


隣はコーヒーショップだった。


店内は大勢の客で賑わっていてレジ前にたくさん人が並んでいた。


並ぶふりをする。


見たくなかった。


あれは夏女へのクリスマスプレゼントだ。


イヴは夏女と過ごすんだ。


その事実が私の心を掻き乱しパニックへと陥らせる。


息苦しくなって呼吸をするのがやっとの状態だ。