私は浮気相手と天秤に掛けられている。


葵の心を取り返さないと、浮気相手の夏女に完全に取られてしまう。


まだ、夏女に葵を完全に奪われてしまったわけじゃない。


葵は私のところに戻ってくる。


それだけが救いだ。


今晩はきっと、仕事なんだ。


それで、私とは会えないんだろう。


ほろ苦い気持ちを抱いて再び歩き出す。


広場からまた路面店が続くフロアを進んでいた。


ここを抜ければ地下鉄に着く。


とことこ歩いていると間口の広いガラス張りのショップがあった。


店内に背の高い黒色のコートを着た男性がいたので目を留めずにはいられなかった。


葵に瓜二つだ。


でも、葵は仕事のはずだから店にいるわけがない。


よく似た人だろう。


通り過ぎようと思った。


それなのに、足が自然に止まる。


もう一度、見てみる。


それは、間違いなく葵だった。


ガラスのそばまで寄っていって外から中の様子を観察した。