興味ないと言えば、嘘になる。


彼は私のストライゾーン、ど真ん中だった。


爽やか系でなおかつ色気があるといった貴重な珍物で特に優しい目元に引かれる。


面長で筋の通った鼻、形のきわめて良い唇、キリリとした濃くも薄くもない眉毛、どのパーツも完璧に見える。


すべてが整っていて引き締まっていてピカッと光り輝いている、そんな人が遠藤さんだった。


このように気品高い王子様のようなキラキラした遠藤さんを見て興味を持たない女性は、おそらくいないだろう。


「やめとけ、遠藤。この子は、お前に興味ないって。彼氏と熱愛中なんだから」


店長が口を挟んできた。


「ジョークだよ、ジョーク」


素の表情で遠藤さんはそう言いながら、顔の前で手を振る。


「『薫ちゃん』っていってね、花音の友達。大人っぽいだろ? 花音と違って器量が良いからお前が口説くのも無理はないわな」


店長がにっこりしながらそう言って下向き加減に作業していると、店長のそばを通り過ぎようとしていた花音が目を吊り上げて「無駄口叩いてないで仕事しろ、仕事」と言ってカウンターの中で何か起こした様子だった。


カウンター越しのこちらからでは状況が掴めない。


「いででっ。はい。すいません。真面目に働きます」


店長は身を縮めて小さくなって店員に謝った。


そのやり取りが可笑しくて私と遠藤さんは吹いて笑い合った。


花音がカウンターを出てテーブル席の方へ行ってしまうと、安心したように「ふーっ」と店長は息を吐いた。


「あいつ、店長の俺を蹴りやがった……」


店長は小声で呟くように言った。


私と遠藤さんはまた顔を見合わせて笑った。