「ありがと。店長、気が利くね」


皿の中のつくねを一本さっそく味見する。


柔らかくて味があっさりしている。


「そういえば、久々だね。ずっと、薫ちゃん、うちに来てくれなかったから」


「そうですね。店に来なかったですね」


私は店長を捉まえて愚痴ることにした。


「ここのところ、彼氏が遊んでくれなくて」


「そうなんだ」


「実家帰ったんですよ」


「それはまた、なんで? ケンカでもしたの?」


店長が、只事ではないといった感じの驚いた表情で尋ねる。


「ううん。そうじゃなくて。ケンカしたけど仲直りしたし。別の理由ですよ。ケンカじゃないですからね」


顔の前で両手を振りながら、明るく笑ってやんわり否定する。


そういえば、店長は葵の友達だ。


葵のお母さんが病気であることを知っているかもしれない。


病名が知りたいから聞いてみよう。


「店長。葵のお母さんが病気なの知ってる?」


探るように問いを投げかける。


店長は妙な顔をした。


「何、言ってるの?」