容疑者が嘘をつく時のように、内に秘めた焦りをかき消すかのように平然と答える。


「今日、テストが終わって放課後、携帯見て落ち込んでなかった?」


今日は期末試験終了日だった。


長い、長い試験期間がようやく終わったんだ。


「クリスマスはやっぱりダメだって。メールの文面見てがっかりしたんだ。冬休み中ずっと会えないかも。お正月も無理そうなんだよね」


「それって彼氏っていえるのかなあ? 私はもちろんクリスマスを彼氏と過ごすよ。お正月だって旅行に行くし。冬休みはいっぱい予定あって充実した日々が送れそう。夏休みより時間取れないよ。その時はまた宿題よろしくね」


「もう、嫌だよ。夏休みの宿題で徹夜して二度と手伝わないって決めたんだから。勘弁してよね」


「そこをなんとか。薫様のおかげで間に合ったんだから。また、頼むよ」


「ダメ、ダメ。冬休みは花音と連絡取らない」


「ケチ!」


花音が私の椅子の脚を軽く蹴った。


ガラガラと格子戸が開く。


大人数の客が入ってきた。


「いらっしゃいませー!」


花音が元気よく挨拶する。


花音は客の接客に向かった。


一人、取り残される。


一人は孤独だ。


「はい、つくね。やっぱり薫ちゃんはこれだよね」


カウンターの中の店長が注文せずとも私の目の前につくねの皿と熱いお茶を置いた。