キッパリ言い捨てる。


素気ない男だ。


前は、こんなんじゃなかった。


どうしたんだろう?


もしかして、お母さんの病気が原因だろうか?


今まで塞ぎ込んでいたのは病気のせいなのではないだろうか?


私が尋ねたら触れられたくない様子だった。


よっぽど悪いんだ。


助からないのかもしれない。


余命を宣告されて一人で悩んでいるのかもしれない。


心配になってきた。


彼女の私に本当のことを話してほしい。


一人で抱え込まないで私に相談してほしい。


そう心の中で強く思った。


▼ ▼ ▼ ▼ ▼


格子戸を開けると、見慣れた店内のカウンター席が目に入った。


いつものように、席に腰掛けようと近づく。


「いらっしゃいませ」


男の子の声がした。


気にせず、私はマフラーを取ってコートを脱いで椅子の背もたれにかけて座った。