「一ヶ月は帰ってこない」


冷めた口調でそう告げる。


一ヶ月も帰ってこないんだ。


クリスマスを挟むことになる。


今年のクリスマスは葵と二人で迎えられると思っていた。


この部屋で料理を作ってお祝いしようと考えていた。


それが、期末が終わってからの私の楽しみだった。


せっかくの聖夜を恋人がいるのに一人で過ごすなんて嫌だ。


クリスマスだけは帰ってきてほしい。


「クリスマスは一緒に過ごそうよ」


約束を取り付けようと、おそるおそる後ろを振り向く。


葵はもう怒っていなかった。


柔らかい表情を見て安堵する。


「私、ここで待ってる。葵が帰ってくるの、料理作って待ってるから。一緒に過ごそうね」


いい返事を期待して葵に微笑みかける。


「仕事」


期待とは裏腹に冷たい返事が返ってきた。


「仕事で過ごせないの?」


一縷の望みを捨て切れず聞いてみる。


「うん。クリスマスは忙しいんだ。だから、会えない」