「おいしい?」


聞いても答えてくれない。


これだけ気を遣っても相手にされない。


機嫌が悪いんだ。


そっとしておこう。


諦めてリビングに戻った。


ガラステーブルの前に座って古典の教科書とノートを読んで暗記していると、葵がリビングに来てソファに腰を下ろした。


「勉強?」


葵が問いかける。


「うん」


私が笑顔で振り返って頷く。


「あの、考えたんだけど……」


葵が、ためらいがちに切り出す。


「何?」


「しばらく実家に帰るよ」


「実家ってどうして?」


「実家のおふくろが病気なんだ」


そういえば、夏休みにお母さんが夏風邪を引いたと言っていた。


ただの風邪ではなかったのかもしれない。


「病気ってどんな病気? 重いの?」