間近で葵の顔を見た。


葵は浮かない顔をしていた。


何か悩んでいるようだ。


「どうしたの? 何かあった?」


話しかけても上の空だ。


それどころか、葵はコーヒーがマグカップ一杯に入っているのに気付かない様子だ。


「あー、こぼれるよ!」


私の声も虚しくコーヒーはマグカップから溢れてキッチンカウンターにこぼれた。


急いで私が布巾を持ってきて拭く。


「どうしたの!?」


拭きながら葵の顔を見つめる。


憂いが私に伝染する。


私まで気分が暗くなる。


「何でもない」


葵が眉間に皺を寄せて呟く。


今日、初めて口を利いてくれた。


嬉しいけれど、気が晴れない。


「はい、コーヒー」


マグカップを両手で持って葵に手渡す。


葵は黙ってマグカップのコーヒーを口につけた。