話しているうちに、どんどん花音の声は曇っていった。


二人で力を合わせれば宿題提出日までに間に合うだろうか?


「ただいまー」


玄関から葵の声がした。


帰ってきたんだ。


「うん。わかった。じゃあ、また」


私が別れを告げる。


「うん。ごめんね。また明日」


花音は心の底から申し訳なさそうな声を出して電話を切った。


それと同時に、葵がキッチンに顔を出す。


葵は、手に白い箱を持っていた。


「おかえり。それは?」


「これ?」


聞き返した葵が白い箱を掲げた。


「ケーキ」


単語でそう答えると箱をダイニングテーブルに置いた。


「ケーキ?」


「そう。明日、誕生日でしょ?」


「なんで知ってるの?」


「だいぶ前に花音ちゃんから聞いたんだ。店で飲んでる時に誕生日を知ってるか聞かれて『知らない』って言ったら教えてくれたんだ。『彼女の誕生日は覚えておくように』って言われてね」