優がわからない。


「もう戻れないよ?」


花音の言葉は重く感じられた。


もう、優には戻れない。


「わかってる」


「まー、これでよかったんだよね。それぞれ新しい人ができたわけだし。私は優がお気に入りだったけどなあ」


「花音が付き合えばよかったんじゃない?」


「そういう好きじゃなくて……ペットみたいに可愛いって思ってただけ……」


「あっそ。ところで、もうすぐ学校始まるね。また、今年も『宿題手伝って』とか言わないでね」


「あー!」


花音が声を限りに叫ぶ。


あまりの大声にまた私の鼓膜が震えた。


「忘れてた。手伝って。お願い」


花音が哀願する。


「ばかのん!」


そんな花音を私が一喝する。


花音は毎年これだ。


自分の力で夏休みの宿題をやり遂げたことがない。


いつものことなので今年も手伝ってやるか。


「もう夏休みも終わりなんだね。今年の夏は楽しかったなあ。あれ? 明日、誕生日だよね?」