「そう。軽い熱中症かな? 水分取った方がいいよ」


冷蔵庫を開けて私のためにウーロン茶の大きなペットボトルを出してくれた。


それを、ダイニングテーブルに置く。


「うん。あ、携帯鳴ってた。二回も」


わざと気にも留めてないといった風に演技する。


「そう。誰からだろう?」


葵は不思議そうにしながら、ダイニングテーブルに置きっぱなしだった私専用のグラスを掴むと水道水で軽く洗った。


「見なかったよ、私」


「うん」


葵は冷凍室から製氷皿を取り出して氷をグラスに入れた。


神妙な顔で葵は、ウーロン茶を氷入りグラスに注ぐ。


それを私に渡した。


「はい」


「ありがとう。見てくれば?」


「うん」


素直に葵は私の言うことを聞いてリビングのソファまで歩いていった。


グラスの冷たいウーロン茶を飲みながら、横目でじっと葵の様子を窺う。


葵は折りたたみ携帯を開くと、思いつめた表情をした。


そして、私の方に向き直ると優しく微笑んでこう口を開いた。


「おふくろからだった」