その看板の「風花」と書かれた文字に吸い寄せられるように私は歩を進めた。
「風花」と染め抜かれた紺色の暖簾の前に立つ。
そして、赤提灯を見ながら荒くなった呼吸を整える。
ここは、友達がアルバイトしている居酒屋で何度か来たことがある。
友達というのは幼なじみで同じマンションに住んでいて小学校から高校まで一緒の大の仲良しの子だ。
学校ではクラスが別だけれど、優と三人でいつも一緒に帰っている。
優とも仲がいい。
たまにはバイト先に顔を出して欲しいという彼女の要望に応えて居酒屋に行く約束をして優と来る予定だったけれど、優は家族と出かけることになったから行けないと私とはあれから数時間後に別れた。
この店は、和テイストで扉は格子の引き戸になっている。
自動ではなく手動で開ける。
暖簾をくぐって扉を開けると、店内は昔ながらの日本風を醸し出した居酒屋らしい内装でお客さんで賑わっていた。
わりと広めでカウンター席とテーブル席に分かれている。
ここは大きな柱や梁が印象的で木のぬくもりが感じられ、温かくて落ち着ける。
ふと、L字型カウンターの中で立って作業している人物たちに目を向けると、ふくよかな男性と目が合って彼が隣の背の高い女の子の体をこちらを見ながら軽く肘で突いた。
彼女は顔を上げてこっちを見る。
花音(かのん)だ。
「いらっしゃ……。あー! 薫ー! 来てくれたんだ」
「花音」
私たちは同時に喋った。
「やあ。いらっしゃい。薫ちゃん。今日は一人? 彼氏はどうしたの?」
そう陽気に話しかけてきたのは花音の隣にいる、私が来たことを合図で知らせてくれた、ふくよかな店長だった。
「風花」と染め抜かれた紺色の暖簾の前に立つ。
そして、赤提灯を見ながら荒くなった呼吸を整える。
ここは、友達がアルバイトしている居酒屋で何度か来たことがある。
友達というのは幼なじみで同じマンションに住んでいて小学校から高校まで一緒の大の仲良しの子だ。
学校ではクラスが別だけれど、優と三人でいつも一緒に帰っている。
優とも仲がいい。
たまにはバイト先に顔を出して欲しいという彼女の要望に応えて居酒屋に行く約束をして優と来る予定だったけれど、優は家族と出かけることになったから行けないと私とはあれから数時間後に別れた。
この店は、和テイストで扉は格子の引き戸になっている。
自動ではなく手動で開ける。
暖簾をくぐって扉を開けると、店内は昔ながらの日本風を醸し出した居酒屋らしい内装でお客さんで賑わっていた。
わりと広めでカウンター席とテーブル席に分かれている。
ここは大きな柱や梁が印象的で木のぬくもりが感じられ、温かくて落ち着ける。
ふと、L字型カウンターの中で立って作業している人物たちに目を向けると、ふくよかな男性と目が合って彼が隣の背の高い女の子の体をこちらを見ながら軽く肘で突いた。
彼女は顔を上げてこっちを見る。
花音(かのん)だ。
「いらっしゃ……。あー! 薫ー! 来てくれたんだ」
「花音」
私たちは同時に喋った。
「やあ。いらっしゃい。薫ちゃん。今日は一人? 彼氏はどうしたの?」
そう陽気に話しかけてきたのは花音の隣にいる、私が来たことを合図で知らせてくれた、ふくよかな店長だった。