「あ? さっきちゃんと羽見ただろ? それに飛んでたし。何なら、もう一回見せてやろうか?」
しゃあねえなあ――なんてぼやきながらおもむろに立ち上がろうとする相手に、あたしはあわてて両手を振る。
「いっ、いい! 結構です! ちゃんとわかった。わかったから!」
もこっと衣服の下から盛り上がりかけた羽に、再び出てきてもらうわけにはいかないのだ。
だって、もうすぐ七時――あのチビ怪獣たちが、お腹をすかせて戻ってくる頃合だからだ。
いくらなんでもあいつらに非人間的存在をわざわざ見せ付けて余計に騒々しい事態になるのは避けたい。
ああ、それにしてもなんでこんなことに――さっきまで失恋の大ショックの中にいたはずなのに、今度は別の意味で頭が痛んだりして。
あれ? もしかしてあたし、あまりのショックで幻覚見てる――ってことは。
「あでで……違うか」
「何やってんだ?」
試しに頬をつねってみて、普通に痛かったので首を振った。何でもない、と答えて上目遣いになるあたし。
「で……あの、キューピッドさん」
「アモル」
「え?」
「アモルって、さっき自己紹介してやっただろ? それにキューピッドじゃなくて、アロウ・シューター。まあ、これも人間界の言葉に訳せば、っていう言い方でしかないけど、わかりやすくするにはしょうがないしさ。で? 何が聞きたい? 守秘義務とかにひっかからねえ内容なら、何でも答えるけど」
さっぱりと長さまで短くなってしまった黒髪をかきあげ、いたずらっぽい目つきで笑う彼――自称キューピッド、もといアロウ・シューターくんは、その辺にいそうな、ごく普通の男の子に今は見える。
あいかわらず整った容姿は、美少年の域に余裕で入るものではあるけれど。
「守秘義務……」
「そ。一応その業務の性質上、成立させたカップルの個人情報なんかは全部、守秘する決まりになってるわけ。だからあんたもその辺よろしく頼むね」
軽く肩までポン、と叩かれて、あたしはあんぐり口を開ける。
それからやっと、聞きたかったことを思い出した。
しゃあねえなあ――なんてぼやきながらおもむろに立ち上がろうとする相手に、あたしはあわてて両手を振る。
「いっ、いい! 結構です! ちゃんとわかった。わかったから!」
もこっと衣服の下から盛り上がりかけた羽に、再び出てきてもらうわけにはいかないのだ。
だって、もうすぐ七時――あのチビ怪獣たちが、お腹をすかせて戻ってくる頃合だからだ。
いくらなんでもあいつらに非人間的存在をわざわざ見せ付けて余計に騒々しい事態になるのは避けたい。
ああ、それにしてもなんでこんなことに――さっきまで失恋の大ショックの中にいたはずなのに、今度は別の意味で頭が痛んだりして。
あれ? もしかしてあたし、あまりのショックで幻覚見てる――ってことは。
「あでで……違うか」
「何やってんだ?」
試しに頬をつねってみて、普通に痛かったので首を振った。何でもない、と答えて上目遣いになるあたし。
「で……あの、キューピッドさん」
「アモル」
「え?」
「アモルって、さっき自己紹介してやっただろ? それにキューピッドじゃなくて、アロウ・シューター。まあ、これも人間界の言葉に訳せば、っていう言い方でしかないけど、わかりやすくするにはしょうがないしさ。で? 何が聞きたい? 守秘義務とかにひっかからねえ内容なら、何でも答えるけど」
さっぱりと長さまで短くなってしまった黒髪をかきあげ、いたずらっぽい目つきで笑う彼――自称キューピッド、もといアロウ・シューターくんは、その辺にいそうな、ごく普通の男の子に今は見える。
あいかわらず整った容姿は、美少年の域に余裕で入るものではあるけれど。
「守秘義務……」
「そ。一応その業務の性質上、成立させたカップルの個人情報なんかは全部、守秘する決まりになってるわけ。だからあんたもその辺よろしく頼むね」
軽く肩までポン、と叩かれて、あたしはあんぐり口を開ける。
それからやっと、聞きたかったことを思い出した。