あたしも帰ろうとして、バッグをとった。
「あれ…?」
付けていたはずの、猫のマスコットがない。
見回すと、相崎の椅子の下にマスコット。
うわぁ…どうしよう。
軽く人見知りなあたしにとって、初対面の…しかも冷たいらしい人に話しかけるなんて、すごい勇気のいることだ。
相崎が帰ってから拾おうかな、と思ったけど、まだ帰る気配はない。
「ね……ねぇ」
勇気を振り絞って話しかけると、黙ったままこっちを向いた。
「椅子の下に…ストラップ、落としちゃったんだけど……えっと…」
最後まで言い終わらないうちに、相崎はあたしにマスコットを差し出した。
「あ、ありがと…」