僕はその何かを拾い上げてみた。茶色の歪な球状で、大きさはパチンコ玉程度だ。紐がついているからネックレスだろうか?
にしては随分と不細工だ。普通は真珠とかダイヤとかエメラルドとかの宝石を使うものだが、これはそこら辺に落ちてる石ころと変わらないように見えた。

「交番に届けたほうがいいんじゃないかな?」

絵夢が言った。もっともだが、生憎この辺りは治安が良いので交番は無い。

「いやこれは元の場所に置いておこうよ。きっと持ち主も探してるだろうし、勝手にどこかへやるのも困るだろうし」
「じゃあ早く行こうよー!」

絵夢が先に走り出した。

「おいちょっと待てっつーの!」

ネックレスを側のガードレールに引っ掛ける。

「はーやーくぅー!」

走って絵夢を追い掛ける。アイツは足は誰よりも速いから高校生の僕が追い付くのにちょっと苦労した。



この時
僕はまだ気がつかなかった。このいびつな形のネックレスの真の姿を。あれが僕の未来を変え、日常を脱する入口だったということを。



しばらく後、いつもの姫咲駅に到着した。

「絵夢。電車の使い方ぐらい分かるな?」