携帯の時計を見ると7時26分。今日は始業式だから開始は9時、それで学校には電車で40分程度で着くからかなり余裕を持った登校だ。
家を出てすぐ近くの商店街を横切り、コンビニが見えた所で左に曲がり、長い緩やかな下り坂を降りていく。この下り坂は大通りになっていて、朝から沢山の車が往来している。

絵夢は「わあ~」とか「へえ~」とか「ふ~ん」とか言いながら、あちこちをキョロキョロ見回している。いつもとは違う通学路だからだろうか。そういえば絵夢は中学生になるのを、かなり楽しみにしていた。

「だってお兄ちゃんと一緒に学校に行けるもん!」

……。
まあ理由は何にせよ、学校に行くのが楽しみなのは良いことじゃないか。僕の方は高校生になっても何ら中学の時と変わらない。あたりまえな日常の延長線上に過ぎない。僕の心が空っぽなのはその為だろうか。春休みが終わり、また同じ繰り返しが始まると思うと足取りが重く感じてしまう。

もうすぐいつも通りの駅が見えて来るというところで
「おわっととととと!?」
絵夢が何かを踏んで足を滑らせかける。

「あっぶないなぁ~!」
絵夢がぷんぷんと怒った。