ちょうど新学期が始まる今日を待ちわびていたかのように桜が咲き誇っている。僕の家の裏手にはこんな見事な桜並木の通りがあり、通称「桜花通り」と言われている。

「兄ちゃあ~ん」
「何だよ絵夢」
「この洗顔クリーム……泡立たないよぅ……」

僕は妹のいる洗面所に向かう。予想通りだった。僕は洗顔クリームと歯磨き粉を絵夢の目の前に見せながら言った。

「こっちが洗顔クリームで、こっちが歯磨き粉だ。分かるな? もう今日から中学生なんだから分かるよな?」
「大丈夫だも~ん……あははは……Z」
「絵夢!」
「はっ!? 危ない危ない………」

歯磨き粉で顔洗うなよ。頼むからしっかりしてくれ、妹よ。

やっと絵夢の登校準備か終わり、僕は一緒に絵夢と家を出た。今までなら僕は絵夢より先に登校していたのだが、今日はそうするわけには行かない。僕の通う学校「五月原高校」は中高一敢校だ。そして僕は今日から高校生で、絵夢は中学生。今までは絵夢を置いていってもアイツは小学校に登校したが、今日からは通う学校が同じ。よってこれから学校までの道案内を任された訳だ。

「忘れ物無いか?」
「うん」

春のそよ風が気持ちいいが、僕の心は空っぽだった。