大人の世界ってものは大変だ。平日は僕が寝てから家に帰り、僕が起きる前に出発する。でもそんな両親でも必ず休日には帰ってきてくれるから好きだ。
父はエリート外交官、母は国際的に活躍する日本人医療協会だったかの会長で、二人とも激務の日々を送っている。近年の国際化社会に貢献していらっしゃるわけだ。
そんな訳で、僕と絵夢は二人で生活することが多い。

「全く絵夢……今日から新学年の新学期だっていうのに、そんなんで大丈夫なのか?」

軽くウインナーを炒めて、卵焼き器に溶き卵を流し入れる。

「おい。聞いてるのか?」

溜め息をつきながら毒づいていると

「………Zzz……」

「だーかーら起きろってーの!」



朝食と弁当が出来上がり、僕と未だ半分寝ている妹でご飯を……。

「絵夢」
「ん…にゃ…にぃ……?」
「冷水で顔洗ってこい」
「ふぁ……は…い……」


倒れている象が起き上がるかのような緩慢な動きで、のろのろと洗面所に向かった。いつまでもあの調子じゃ、こっちまで眠たくなるってーの。
え? 語尾が変? 口癖だ、気にするな。



ベランダを見るといつもの光景が広がっている。