もう一度拾いあげてみる。そして同時に、
ハレンの事を思い出した。ハレンの持っていたのは、翡翆(ひすい)色の石だった。
これは黄土色だ。しかし、布で研けば美しい琥珀(こはく)色になりそうな輝きだ。
そしてハレンに、これが落ちていた事を言った。
反応は、なぜか黙ってしまった。

月の光がネックレスを照らす。
辺りには、
往来する車と、その車のヘッドライト。
その中にいる僕。
そして、僕の手の中にある謎めいたネックレス……
雲の無い星空を見上げた。上を向く。夜桜が綺麗に咲き誇るその時間。その瞬間。

夜が昼になったのか。
ネックレスから真っ白なまばゆい光が放たれる。
辺りの景色は全て真っ白に染まり、車のエンジン音や喧騒は全く聞こえない。
一瞬額に生暖かい空気が流れたかと思うと、目の前に「何か」が現れた。
それは僕の親指ほどしかない大きさの女性だった。
白い羽衣を纏い、僕よりも年上のように見え、その青い瞳からは、理知的な印象を受ける。
その少女は口を開けず、僕の心に直接言葉を伝える。その言葉は次のようなものだった。

「貴方は、私との契約が認められた。貴方は此を受理する者か?」