すると何だろうか。
またふっと駅で見掛けた少女を思い出した。
あの子……今頃は何をしているんだろう?
同じ桜を見ているのかな……。

何言ってるんだろうな。僕は。
まるで――
一目惚れしてしまったみたいじゃないか。


その時だった。
僕の頭の中で、
はっきりとあの子の顔が写った。
凛としたあの子の顔が…。心地の良い清風が全身を通り抜けていく。

そして

急に扉が開いた。
そして入ってきたその少女は……。
あの桜から散り落ちて、命が吹き込まれたかのようだ。その麗しい髪を忘れるはずがない。紛れもなく、今朝の少女だったのだ。
この時、不思議と驚きの感情は無かった。
来る予感がしていたのだ。
「転校生を~紹介します~」
「長峰清奈です。イギリスから来ました。よろしく」
教室が騒ぎ始める。
特に男子がそうだ。
そりゃあそうだろう。
あのさくらちゃんに全く退けを取らない美しさだからだ。
だが、さくらちゃんとは決定的に違う所がある。
さくらちゃんがひまわりなら、
長峰清奈という少女はバラだろう。
まさかこんなに近くに可憐な女の子が二人も出来るとは思わなかった。
そして長峰清奈こそが
僕を非日常へと誘った人物なのだった。