辺り一面にび色空だった。

空気の胎動は全く感じられない。いや、初めから空気など無いのだろう。故に時間は止まっており、いるだけで虚無感すら感じられる。

この状況を端的に表した言葉は何だろう。
滅び――か。
なるほど、生きているものなど何ひとつ無い。あらゆる物質が、停止、崩壊しているこの世界において、生を見つけようとするなど馬鹿げていよう。

周りに何があるのだろうか。最初に見たものは鉄の山。無機質世界のシンボル。

山といっても、それは余りにも歪すぎる。鉄が所々欠けてヒビが入っている。触るとボロボロと崩れ去りそうだ。巨大な岩が風化したような、頼りない存在感がそれから漂っている。

次に見たものは白骨。
それは犬なのか猫なのか獅子なのか人なのかは分からない。そもそも元々生きていたのか不思議になるような有り様だ。何だったのかは知らないが、肉や内臓ははとうに腐り果てたのだろう。骨の数は有り余るほどあるのか。大地を白く染めあげた。

見上げると空には黒い太陽。
太陽は世界を光に包む。ならばこれは世界を闇に堕とす太陽か。曇り空の薄暗さと喩えると分かりやすいだろう。生を育む光は失せ、何も照らされてはいない。