私の心臓が緊張を示す。
蘭高は前、私をさらった人達の高校だ。
よりによって西園寺くんがいない時に来るなんて―――
その時、門に立つその人がこちらを振り向く。
「―――あっ」
見覚えのあるその顔に、私は思わず小さい声を上げた。
「やっと会えた」
その人は、私を見て笑った。
「あんた、オレの事覚えてたんだな」
驚く部活仲間と別れた私は、彼と道を歩きながら話していた。
「覚えてます。確か……ヨウジさん?」
「ああ、赤塚陽二(あかつかようじ)だ」
陽二さんは明るい茶髪をいじりながら、人懐っこい笑みを浮かべた。