「―――何が『ヒドい』って?」
その時、不意に後ろから聞こえた声に私は飛び上がりそうになった。
「おっ、玲!」
私と向かい合わせに座った嘉川くんは、いかにも何でもないという風に笑いかける。
「今さ、今日の家の朝メシの話してたんだよ」
「あー、母親が父親とケンカしてて、全員焦げたパン食わされたヤツか」
「そうそう!な、寺島ちゃん」
嘉川くんにうながされ、私は慌ててコクコクと何度も頷く。
「確かにヒデェけど、お前朝から何回その話してんだよ」
「だってまだ口ん中苦いんだぜ?」
そう言って笑い合う2人をよそに、私はさっきの話に気持ちが沈むのを感じていた。