しぶしぶ座った席は、寺島の斜め後ろ。

俺が座ると、自己紹介は再開した。

「じゃあ寺島さん、改めてお願いね」

「あ……はい。寺島遥です。宜しくお願いします」

その声は今にも消えそうにちっさくて、俺は思わずヤジを飛ばした。

「聞こえねー」

「西園寺くん!」

「はは、玲ってばイジメんなよ!」

センコーは怒って、ダチは楽しそうに笑った。

そん時のアイツはただ、下を向いて怯えてたっけ。

泣くんじゃねーのかと思ったが、意外に泣かなかったな。