「おい、寺島!」



後ろで西園寺くんの声がしたけど、夢中で廊下を走る。

途中、何人もの子たちに奇異の目で見られても。

それでも私は走った。




疲れてスピードが緩んだ時、私の腕を誰かがつかんだ。

「お前……意外と、早いのな」

それは、呆れた様な表情で息を吐く西園寺くんだった。

「は、離して……」

「やだね。離したら逃げんだろ?」

西園寺くんの力は強く、もがいても離してくれそうにない。

私は諦めて、身体の力を抜く。


「構わないでって、言ったじゃない」

私の言葉に、西園寺くんはため息をつく。