お店を出た私は、なるべくその場から離れようと急いで歩く。


「『カノコさん』、だっけ……」

あの子ってやっぱり彼女だよね?

すごく仲が良さそうだったし、何よりあの西園寺くんがあんなに優しい笑顔を浮かべるなんて。



西園寺くんの笑顔を思い出して、私はどこか気持ちが沈むのを感じた。


そうだよね。

いくら怖い人っていってもあんなにカッコいいんだし、彼女くらい居るよね。

私には関係ない。

でもどうして、こんなに胸が苦しいんだろう。



私は一人、重い足取りで家へと帰った。