あちこちで互いに睨みあう中、ずっと私の頬を撫でていた西園寺くんがゆっくり立ち上がった。


「真司(しんじ)、帰るぞ」

そう言うと、服の汚れを軽くはたく。

「いいのか、玲」

「寺島が無事だし、もういいだろ」

「分かった」

西園寺くんは私を立たせると、手を引いてゆっくり歩き始めた。

「ま、待て西園寺……!」

「お前ら、次やんなら人質なんか取るんじゃねぇぞ。こんなもんじゃ済まさねぇ」

そう言って睨みつけた西園寺くんの迫力には、腕を引かれている私も思わずゾッとした。