「さ、西園寺くん……」
思わず不安げに出した私の言葉に、前に立つ彼らが『えっ?』という顔をした。
「……西園寺、ってあの西園寺?」
途端、ザワザワと顔を寄せあい始める。
「ちょ、ヤバイじゃん」
「どーすんだよっ」
そのうち彼らの目が再び西園寺くんに向けられて……。
「お前ら、どーすんだ?」
かなり不機嫌そうな低い声が響き渡ったその後、一瞬で彼らは辺りに散らばった。
「逃げろー!」
私が呆然としている間に、彼らは素早く逃げてしまっていた。
「ったく、チューボーが……」
西園寺くんは呆れた様子で舌打ちする。
「えっ、中学生だったの?」
「ああ。どうせアイツら来年は蘭高生だろうけどな」
蘭高……。
私の脳裏に浮かんだのは赤い髪の羽村さんと、明るく笑う陽二さん。
元気かな……。
「しっかし、羽村が来年から酒屋で働いてるなんて、想像しただけで笑えるな」
西園寺くんが思い出したように笑う。
今年で卒業の羽村さんはご実家の酒屋さんを手伝うらしく、今はグループの幹部引き継ぎとかで忙しいと言っていた。
そして多分、新しいトップには陽二さんを推薦するだろうと西園寺くんは予想している。