広い庭の向こうに見えるのも、やっぱり大きな建物で。
私は気後れしてしまう。
玄関にたどり着くと、西園寺くんがドアに手をかける前に開いた。
「お帰りなさいませ」
ドアの向こうから顔を出したのは、灰色の髪のお婆さんだった。
「ただいま。ユキさん、こいつが言ってた寺島」
「あら、まぁまぁ。いらっしゃいませ」
ユキさんと呼ばれたお婆さんは優しく笑いかけてくれた。
「寺島、ウチのお手伝いさんのユキさん」
お手伝いさんっ?
驚きつつも、慌てて頭を下げる。
「寺島遥です、お邪魔します!」
それから、私は西園寺くんに居間へと案内された。
広い玄関に広い廊下。高そうな花瓶や家具が並んでいて、何だか別世界みたい。
居間も広くて、教室くらいあるかも……。