慣れた手つきで、西園寺くんがチャイムを鳴らす。
チャイムの上の表札に、ローマ字で『SAIONJI』と書いてある。
こ、こんな大きな所が西園寺くんのお家なの?
驚く間もなく相手の声が聞こえた。
『はい』
「あ、ユキさん。俺」
『玲坊ちゃま、少々お待ち下さいね』
ぼ、坊ちゃまって!
「……ったく、その呼び方は止めろってんのに」
呆れた様子で独りつぶやく彼の耳がちょっと赤く見えた。
門の鍵が開く音がして、西園寺くんが大きな門の隣にある小さい扉を開く。
「ん、入れよ」
少しぶっきらぼうに促されて、私は中へと入った。
中に入ると、石が点々と置かれた道が続いていて、周りは緑の芝生。
隣の大きな門は多分車が出入りする所かな?
なんだかまるで、ドラマに出てくる豪邸みたい……。
「寺島?」
私が驚きにポカンとしていると、先に行こうとした西園寺くんに呼びかけられた。
「あ、ごめん!」
慌てて後を追う。